■ 「カオス理論」を、ご存知だろうか?
小さな決定が、全体のふるまいを、どう支配するかを研究した理論だ。 コンピュータの登場により、人手では想像もできないような膨大なる計算が可能となってから、これを考えたり、検証することが可能となった。
コンピューターの中から生まれたその理論はまた、1990年代に経験した急速なるIT(情報技術)の発達にも、相乗的に一役を買った。 今、わたしたちの快適なIT生活が実現されているのも、カオス理論によって勇気づけられ成功信じ、情熱を注いだ多くのひとたちの賜物かもしれない...
スティーヴン・スピルバーグ(1946-)監督の『ジュラシック・パーク』は、ご覧になられたことと思うが、映画の前半で、ジェフ・ゴールドブラム(1952-)が演じる数学者が、手の甲に水滴をたらして、さて、右左のどちらへ落ちていくのか?という問いかけをする場面があった。
手を意識して水平にと保っていたならば、水滴はどちらの側へと落ちていってもいいように思う。 だが、手の甲の表面の、目には見えないほどの些細な状況が決め手となって、じわりと動き出した方向へと、水は流れていくのだ。
ものごとの初期段階で決まった微細なる方向性とは、その周囲にあるものを巻き込みながら増幅されていき、やがては全体の動きを支配するに至る。 生物ということで考えれば、遺伝子のような微細な決め事が、個体全体の姿を、決定してしまうのである。
映画では、自動操縦のパーク・ツアー車の中で、このカオス理論のたとえ話を、数学者から聞かされることになるが、やがて、夜となると、遺伝子技術で復活した巨大なティラノザウルスが現れて、仰天することになる。
音楽は、スピルバーグとは長年の名コンビ、ジョン・ウィリアムズ(1932-)が担当。 たくましい生命へのロマンを掻き立てた。
さて、こちらは、筆者がスケッチしたティラノザウルスである。
画用紙の上に、こすり付けられた木炭の、微細な粒子の集まり具合が重なって、濃淡をつくり、全体としては、全長13m、高さ5m、体重は6トンもあったという、かの恐竜の形態を表現している。
この人知による想像力の技が、カオス思考のなにがしかを発揮し、ひとの感動の部分へと、そこなかとなく結びついていくことに、期待をする... Page
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(C)
柳澤 徹 ドローング 2002・8 #3 (素描)
木炭、ピットチャコール 画用紙 19×23cm 10分 |
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