日本中、そして世界中を、縦横無尽に張りめぐらされている郵便という緻密なシステム。 そのなかを、滑りぬけて飛んでいく際の「通行手形」が切手だ。
多くのひとと同様に、特に子供のころ、収集に励んだ。
子供にとって、ある程度の体感を伴いながら認識できる日常世界といえば、もっぱら自転車の航続距離内だ。 だが、もし切手を貼りつけたならば、手紙という形をとることにはなるが、どんなに遠いところへでも、到達が可能となるのである。
切手収集をしないまでも、このことに一度でもロマンを感じたことがない子がいたとしたら、それこそ不思議・発見であろう。
社会人になってからは一時期、「おとな買い」をしていたことがある。 記念切手が発売されると、シートで買ってしまうのだ。 もし当美術館から、手紙を受け取ったことのある方ならば、お気づきになったことと思うが、貼られていた記念切手は、そのころ購入したものである。
さて、距離を超越するシステム、今、郵便に加えて、すごいものがある。 そう、あなたが今、接続しているインターネットのことだ。
自分の住む町のページでも、また、遠くの島でも、今日までカーニバルをやっている地球の裏側でも、あっという間に、自分の目の前に引っぱってこれるのだ。 まったく、なんという素敵なシステムであることだろう。
さて、本日スタートの新シリーズは、写真家ペトラ・レイナーが撮影したアート・フォトグラフだ。 はるか海の向こう、欧州オーストリアから、インターネット網を経由しての出展である。
1977年、ザルツブルグ生まれ。 大学で写真、民俗学、美術史、社会学を学び、現在、ウィーンで、写真家として活躍中だ。 これまで、ザルツブルグ、コンスタンツ、そしてウィーンでも展覧会を開いている。
まずは1枚目の作品。 お店のウィンドウでは、切手たちが、ここぞ狭しと魅力を振りまいている。
店の前に立つ あるじは、ちょっと袖が短く、ポケットも膨らんだ上着を着ているのだが、その佇まいには、なにやら威厳がある。 コレクターには、この威厳が、人気あるのである... Page
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(C) ペトラ・レイナー 写真集
「ウィーンの古い小売商店」 より 切手屋
オーストリアの写真家 |
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写真作品 「切手屋」 原題 " Philately
" from the Photo book " En Detail - Alte Wiener
Laden ". Photo by Petra Rainer 文 柳澤
徹