どこからともなく出現して、ひとを驚かせた兆(きざし)を、いつともなく忘れそうになったころに、目に見える変化とは、やってくる。
ある季節の中にいると、それが終わらないようにも、思ってしまいがちだ。 しかし、風に、その身を吹かれる冬の枝も、つぎの季節の準備を進めているだろうことは、なにも今年が、はじめてのことではない... 続き/Page
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(C)
柳澤 徹 冬の枝 2003・12 #3 CG |
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歌劇 ローエングリン あらすじ
1848年完成 初演: 1850年 ドイツ・ワイマール
10世紀、北ヨーロッパのブラバンド公国。 先の領主が没してから、その娘で美しいエルザが国をついでいるが、政治的内紛が絶えなかった。
今も、あるよこしまな家臣が、エルザが領主の息子つまり自身の弟を殺したのではないかと、嫌疑をかけていた。 弟は、前領主が亡くなるすこし前に、行方不明となっていたのだった。
やがて、この件について、裁判が執り行われることになった。 力に心もとない彼女は、自分の夢の中に出現したという、神々しい騎士を代理人に立て、裁判に勝てば夫として迎えたいと、希望を述べる。 許可は下り、召還をかけてみる。 すると、河の向こうから、白鳥に曳かれた小船にのって、気高い騎士が現れてきたではないか。
やってきた謎の騎士は、エルザの代理人となる条件として、自分の素性をけっして尋ねてはいけないことを告げる。 夢でもみたその姿に、エルザは喜んで誓い、裁判での全権をゆだねる。 そして騎士は、みごとエルザの冤罪を晴らし、ブラバンド公国の英雄となる。 ふたりは、皆に祝福されながら、夫婦となった。
謎の騎士が秘密にしている名は、ローエングリン。 磔刑になったキリストから流れた血を受け止めて以来、奇跡を起こす力を持つようになった「聖杯」を守ってきた、行い正しき騎士たちのひとりであった。
しかし、このなりゆきを快く思わなかったのは、裁判で負けた家臣の妻だった。 彼女ははかりごとをして、騎士の素性については、他のだれの問いにも答える必要はないが、ただエルザから尋ねられたなら、公の場で答えなくてはならないことを騎士に公約させ、また、エルザには、騎士に対する疑念の種を植えつける。
わだかまりを抱え込むことになってしまったエルザは、夫である騎士に素性の問いただしをしてしまう。 先の公約があるので、彼は皆の前で素性を明かす次第となってしまった。 だが、聖杯の騎士たちには、素性を知られたならば、その場所から立ち去らなくてはならないという、掟があったのだった。
ローエングリンの、想像を超える高貴な身分を聞かされて、皆は感激する。 そして、この地に留まるようにと嘆願した。 しかし、先の白鳥と小船が再び現れてくる。 ローエングリンは残念である気持ちを述べてから、掟にしたがい、小船に乗る。
そのとき上空から、聖杯の使いである白い鳩が飛来し、奇跡の力を伝達する。 すると、あの白鳥が、エルザの弟の姿へと変わったではないか。 なんと、行方不明とされていた弟は、かの家臣の妻が操る妖術によって、白鳥にと姿を変えさせられていたのであった。
ローエングリンを乗せた小船は、白い鳩に曳かれて去っていく。 エルザは自分がしてしまったことへの後悔と、騎士が去った悲しみでいっぱいとなり、もとの姿に戻った弟が支える腕の中で、息絶えてしまう。
悪事を働いた、かの家臣夫妻は駆逐された。 ブラバンド公国は、取り戻すことのできた正統たる領主のもと、再興への道へと、歩みだすのであった。