古今東西を巡る総合芸術表現シリーズ 世界芸術列伝 第160話 2005/04/08公開 |
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■ 住民のほとんどが聖職者という世界最小の独立国に、膨大な訪問者が溢れた。 ローマ法王
ヨハネ・パウロ 2世を、弔問するためだ...
この国、バチカン市国には、数々の芸術家が係わった、15〜17世紀の改築により、現在へと到る形となった、巨大なサン・ピエトロ寺院がある。
訪れるひとは、まず、寺院の前にある広場を、進むことになる。 ベルニーニが設計したもので、円弧を描く回廊を、左右に持つ。
1980年代の後半に、ここを訪れた。 広場を歩いていると、安寧ともいうようなものを、感じてくるから不思議だ。 これは、ただ、大きいからということではなく、設計者の優れたデザインの妙によるものなのだろう。
(日本の京都にあり、明治時代にデザインされた『平安神宮』の前庭も、これに似た感覚を、かもし出すことに、成功していると思う)
寺院の内部へ入り、進んでいくと、奥行き40メートル、高さ20メートルの『システィーナ礼拝堂』がある。 その天井には、『創世記』の世界が、芸術家ミケランジェロの筆により、ドラマチックに、描かれている... 続き/Page
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ミケランジェロ・ブオナローティ (1475-1564)
システィーナ礼拝堂天井画 (1508-12)より アダムの創造
イタリア盛期ルネサンス
ミケランジェロは、イタリア・ルネサンスが、最も盛り上がりを見せた時代を、リードした、彫刻家、建築家、画家、そして詩人である。
建築家としての仕事の代表は、広場の正面から伺える、サン・ピエトロ大聖堂の「ドーム」だ。 優れた造形性のゆえ、以降、世界の建築のドームのモデルともなった。 米国・ワシントンの連邦議会議事堂や、同国の多くの州議事堂も、ミケランジェロの流れを汲んでいる。
さて、2005年4月18日からは、新しい法王を決めるための選挙、「コンクラーベ」が行われるが、ここで、今
世界が抱える、長期的な課題のことを、考えてみよう。
大きなところを、5つほど挙げてみると、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)の高成長と地下資源および先進諸国との関係、少子高齢化、アフリカの貧困、地球温暖化、そして、
(現在、対立している訳ではないが)キリスト教世界とイスラム教世界との友和がある。
これらの課題の多くは、長い時間をかけてではあるが、ひとびとが自由であることと、資本とが、解決していくことになるだろうが、個々人との対話を得意とする宗教は、それに助力することも、また、解決までに生じる、諸所の軋轢(あつれき)の緩和に、力を発揮することも可能なことだろう。
特に、最後に挙げた、もとはキリスト教から枝分かれした宗教である、イスラムとの課題は、自身に直接的なことでもあるので、人類の歴史は、新しい法王に、その道しるべを、期待することにもなるだろう。
イタリア人が選ばれるのが多いローマ法王に、当時は共産主義国であったポーランド出身者を選んだ、前回1978年のコンクラーベは、長期的な先見性が、大いにあった。 なぜなら、当時だれも想像しえなかった、「冷戦の終結」が、そのあと、10年あまりで、実現することになったからである。
そして、東西どちらの陣営に住んでいたひとにとっても、認識できる土地と人口を、いっきに倍とすることが、できたのだった... 続き/Page
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(C) 柳澤 徹 トルコ 2000・11 #6
カッパドキア地方 ギョレメ野外博物館 敷地内にある洞窟教会 写真
トルコ・カッパドキアに住んでいたキリスト教徒は、9世紀ごろから、イスラム教徒による迫害を受けるようになったが、地下に都市を構築したり、岩をくり抜いた洞窟教会を造り、信仰生活を続けた。 最盛期の10世紀には、400を超える教会があった。
これは、そのひとつの洞窟教会の内部を、斜め上方向に撮影したものである。 梁の部分には、鮮やかな色が用いられた、屈託のないフレスコ画が描かれていた。 この作風は、カッパドキア様式と呼ばれている。 |
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さて、コンクラーベであるが、『システィーナ礼拝堂』にて、開催される。
法王には、任期が定められておらず、終身に及ぶことが通例なことからも、意見の集約は、慎重に行われることになろう。
そして、その思索の合間には、選挙人である数々の枢機卿が、天を仰ぎ、ミケランジェロが表した芸術を目にし、こころを研ぎ澄ますことだろう。 |