古今東西を巡る総合芸術表現シリーズ 世界芸術列伝 第165話 2005/07/08公開 |
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■ それが描かれたのが、1ミレニアムの半分も昔だったとは、驚かされる。
自信に満ちた、精緻な筆遣いで、若い女性が描かれている。 『スター・ウォーズ』や『ロード・オブ・ザ・リング』などの映画を通して、あり得ないのであるが
とてもリアリティを持つ、衣装や美術を楽しむことに慣れている わたしたちにとって、この絵の中でも、古風なファッションを超えた向こうの
「人間」を見つめることが、可能であるはずだ。
その目で観たとき、今から500年前、レオナルド・ダ・ヴィンチが、およそ3年をかけて、かの名作『モナ・リザ』を制作していた時期、同じイタリアの地で、確信を持って描かれたこの女性像が、時を経た21世紀の感覚においても
しっくりとくる、美の価値を湛えていることに気づいて、驚くのだ... 続き/Page
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この絵を描いたのは、アルブレヒト・デューラー。 15世紀後半、ドイツのニュルンベルクに生まれた。 20代になってから、イタリアへ旅し、そこで、その前世紀から巻き起こっていた、ルネサンス運動を、本場にて体験する。
10代での修行において、ドイツ絵画芸術の伝統を、消化・吸収してしまったほど、理解力の高かった芸術家デューラーは、たちまち、それが何であるかを把握したようだ...
イタリア・ルネサンス。 それは、世界観を変えた、知的革命。
フィレンツェ、ミラノ、ベネツィアなどのイタリアの都市は、12世紀ごろから経済発展を開始した。 都市の人口は増加していき、生活水準は次第に向上した。 その傾向は、14世紀ごろには明確となり、人びとは、次第に、現世的な快適さを求めるようになった。
この流れは、必然的に、意識の変化をもたらす。 そして、中世を支配してきたキリスト教的世界観を、再構築する必要さえでてきたのだ。 そこで、世界の中心を、神から、いったん「人間」に置いてみた。 その上で、文明の各種分野における研究を進め、世界観を再構築した。 それが、ルネサンス、再生だったのだ。
30代、2度目のイタリア滞在中に描いた、『若きベネツィアの女』は、デューラー作品の多くがそうであるように、実在した特定の人物を、描いたものだろう。 たしかに、理知的で、穏やかで、思慮深そうな性格が、感じられる。
しかし、この絵が、ただ単に、ひとりの女性の人格を表現しているだけのものとは、思えない。
つまり、形態は特定の人物であっても、そこには、そのような、人間の価値の幾つかかが、リアリティと共に、描かれていると思うのだ。
デューラーが、この作品で行った、人間に対する研究の成果。 それが、いかにすばらしいものであったかは、「21世紀でも 十分通用する
普遍的な美の価値」を持っていることが、証明しているだろう... 続き/Page
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こちらは、デューラー50代、故郷のニュルンベルクに戻ってからの作品である。 描かれた男性、ホルツシューアは、デューラーの親しい友で、ニュルンベルクの市長だったという。 見つめる眼差しには、どぎまぎとするかもしれないが、きっと、この通りの風貌の人物だったのだろう。
だが、この作品においても、一人物の性格ということに留まらない、つまり、ルネサンス期に再発見された、人間の持つ普遍的な価値の幾つかが、描き込まれていると、考えて良いだろう。
何が、見えてくるだろうか? 知性、勇気、 仲間や社会を信じるこころ、 1歩ずつ進み 暗黒面に屈しないこと... 続き/Page
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■ 追伸 今ミレニアム最初の年、西暦2000年。 日本銀行の月報によると、この年の日本の輸出入を100としたとすると、2005年のそれは120〜125位にまで増えているそうです。 5年で2割増しなのですから、目覚しく、かつ誇らしい増加量です。
日本は島国なので、輸出入はもっぱら、海路か空路を使うことになりますが、ここのところ貨物船やタンカーの衝突事故が続発しました。 自動車と同じように、事故はドライバーの運転の仕方に大きく依存しますので、船の運航には気を引き締めて当たらなければならないことでしょう。
しかし、貿易がこれほどのペースで伸びているならば、船の行き来も増大しているはずです。 事故が連続したことは、個々が行う注意や集中力の、限界に近づきつつあることの兆候なのかもしれません。 これからも、良いペースで伸ばしていこうとするならば、巨視的に何かをするために、準備を始める時期なのかもしれません。
さて、2005年7月、人民元が切り上げになりました。 恐らく、中国が、今後も国際社会の中で、貿易を盛んにしていくことを希望する上で、自国通貨の為替レートを、特定の一通貨に固定しておくことのメリットよりも、デメリットのほうが大きくなってきたということなのでしょう。
もっとも、為替変動のスピード調節を行うことは、自国内経済にとって必要なことですので、中国の経済が順応できるペースで、変化していくことになるのだろうと思います。
今回のことについて重要な点は、人民元が基本的に、世界に暮らす
わたしたちみんなが、何からの形で係わってる「市場」の原理の力で、均衡されていく運びへとなったので、国際経済・社会にとって、長い目で見ての健全性が増すということであろうかと思います。