とおる美術館　テレビCM大賞！　2004年 受賞作品

『カブドットコム証券　カブＴシャツ編』
バスの中で展開される情景。　カブＴシャツを着た2人の乗客と周囲のひとたちによる寸劇。

かつて、小説家の太宰治（1909-1948）が、自身の作品の中で 「生まれて すみません」と語ったのは有名ですが、2003年の後半から翌年の前半にかけて、社会と共に活動する相当多くの日本人が 「ほんと、生きてて良かった」と思えただろうことを、30秒間で端的に表現しています。

「関係ない」と思っているひとにさえも、多かれ少なかれ、いろいろな形で恩恵を与えたこの動きをモチーフにしたCMが、あらためて今、評されることには、変化の早い現代における、わたしたち人間の時間の認識の仕方について振り返って考えてみるのにも、意味があることと思います。

こちらからは、実際に放映されたCFを観ることができます。　ただし受賞作品は「カブＴシャツ編」のみです。
なお、念のため書き添えますと、本賞が、資本についての短期的な取引を推奨しようとするものではないことは、文脈から読み取ることができることと存じます。

とおる美術館　テレビCM大賞！　2005年 上期 受賞作品

『エバラ食品　浅漬けの素』
日本の核家族化現象と共に、まれな存在となった思われる「サザエさん一家」を彷彿とさせるような家族構成の登場人物たちによるCM。

サイケデリック・ロックバンドの「ドアーズ（1965-1971）」が、「ベンチャーズ（1960-）」をしたようなテーマ音楽も新鮮だった、ジョン・トラボルタ（1954-）、 サミュエル・L・ジャクソン（1948-）、 ユマ・サーマン （1970-）、 ブルース・ウィリス（1955-）出演、クエンティン・タランティーノ（1963-）原作・監督による巧みな映画作品「パルプ・フィクション（1994年）」のダンス・シーンを思い起こさせるようなツイスト（？）踊りを、朝の庭先にて、ラジオ体操をするかのジャージ姿と凝った進行で、披露します。

21世紀初頭、みんながちゃんとやっているはずなのに、なぜかしっかりした形に現われてこない状況を背景に、ひょっとすると1970年代を思い出すようなジャージ姿で、明るくハッスルするアーティスト：テツandトモによる 「♪なんでだろう〜」が流行したことを体験したのち、1990年代後半から社会の関心事となってきた年金制度に関する事項もようやく決着して、新しい枠組みの中において、多世代が明るく生き生きと宥和（ゆうわ）していくことへの「期待感」が、表現されたように思います。

受賞CMが エバラ食品のWebサイトに、掲載されていないのは、ちょっと惜しいところです。

とおる美術館　テレビCM大賞！　2005年 下期 受賞作品

『TEPCOひかり　本上さん写真篇』
好きなものに囲まれての、小奇麗な個人生活を演出したCM　（主人公は美容師という設定）。

1980年代後半から1990年代中盤（後半）にかけて隆盛したカラオケが、ピークを超えることになった原因として、新曲の高度技巧化と並んで、携帯電話への出費増が挙げられるなど、2003年頃まで注目度も高かった個人におけるサービス消費 「通信費」ですが、割引制度が進展したことや、インターネットではADSLの普及など、今では、ライフスタイルの中でも、落ち着きを見せるようになってきましたね。

するだろうことはたいへん確からしいですが、いつかと問われれば、はっきりとはしないのが「デフレからの脱却」。　CMは、通信費についてのデフレ気味のストーリーのようですが、全体の印象や発想には 「脱却への強い期待が背景にあるだろうこと」が、小気味良く感じられます。　（インターネット接続についての、ADSLから光ファイバーへの切替のほうがテーマのメインっぽくも思うので、むしろストーリー自体がインフレ的とも？　．．．こうした混在的な妙味こそが、今風な仕上がりどころでもあるのでしょう）

CM作品を放送で何度か観ているうちに、たとえば「回らないお寿司」とか、すこーし贅沢をしてみようかなという「気分」になった方も、少なからずおられることでしょう。　後世、再び目にすることになる「名CM」となるといいですね。