古今東西を巡る総合芸術表現シリーズ 世界芸術列伝 第230話 2015/09/28公開 |
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フェリックス・メンデルスゾーン
交響曲 第3番 イ短調 作品56 「スコットランド」
Felix Mendelssohn The
Symphony No. 3 in A minor, Op. 56, known as the
Scottish |
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■ そのものごとが、何であるかによって、程度は異なるものだとは思うが、何か同じものを見て、それをどのように解釈するのかは、ひとによって、異なるものだと思う。
ひととはもとより、それぞれ経験値や、ものの観かたなどが異なるのであるから、そうであろうし、また、そのために、民主主義があるのであるから、そうであるのだと思う。
ややかしこまった場のように、一般的には思われがちな美術館も、展覧会場にいたならば、そこは、思考的にほぼ制約がないほど、自由な場であるか、あるいは、そうであるように、最大限の配慮がなされた場であることが分かる。
もし、あなたが、これはなるほどと思う興味惹かれるひとつの作品の前に、しばらくの間、たたずんでいたとしたら、やがて、いろんなひとがやって来て、その作品を観て、さまざまな感想を述べたり、反応を示したりするだろう。
だが、それらの感想や反応の多くは、あなたのそれと、おおむねの傾向性は似てはいるものの、それぞれどこかには異なる点があるのかもしれない。 もし仮に意見交換をすることがあれば、埋まるくらいの差異であるのかもしれないが。
作品をどのように解釈するかは、もとよりひとによって異なるものだし、そもそも美術とは自由なものだと思う。
そういえば、名画と呼ばれる作品ほど、じっくり観ていると、解釈が深まることがある。 変化することもある。
さて、話題を美術から、音楽に移してみると、美術でのこの自由の感覚を持ちつつ、極めて明快で印象に残る作品を、多数生み出した作曲家がいる。
さらに驚くべきは、そのひとの中には、ある同じものを、複数の異なる視点から見たり、解釈するような才能が、自然に備わっている。 さらには、その多視点性が、作品の中で、みごとに融合し、それを聴くわたしたちを、独特の世界へと、連れて行ってくれるのだ。
その作曲家とは、フェリックス・メンデルスゾーンだ。
あの有名な「結婚行進曲」の作曲者だ。 「ロマン派の古典主義者」とも、呼ばれている。
今日は、そのメンデルスゾーンの交響曲 第3番を聴いてみよう。
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フェリックス・メンデルスゾーン(1809-1847)作曲
交響曲 第3番 イ短調 作品56 「スコットランド」
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作曲時期:1829-42年 初演:1842年 |
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■ 第1楽章
ゆっくりと静かな音楽が、情感を語っている。
■ 第2楽章
光がさしたような閃きが、感じられる。 ものごとが、前向きに動いている印象だ。
■ 第3楽章
ゆったりとしたテンポで、美的世界が描かれる。
■ 第4楽章
アップテンポの曲調が続くが、後半になって、ゆったりとした曲調になる。
そこでは、ひとの大らかなこころ根のようなものが、謳いあげられる。
このようなこころのひとが、いたとすれば、そのひとは、ひとに好かれるだろう。
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(C)
柳澤 徹 東京・世田谷 2014・4 #2 等々力渓谷にて 写真
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● 武蔵野台地を流下する谷沢川(やざわがわ)が、国分寺崖線(こくぶんじがいせん)を、切れ込むように谷を形成している場所が、等々力渓谷(とどろきけいこく)である。 ひとの手によらず原生している樹木が、生い茂っている。
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